音の一致率と90パーセントの法則

概要

本稿では、“韻を構成するフレーズ同士がどの程度近い音であるか”を一致率として論じる。

別記事“優れた韻の条件”において連鎖性を挙げたが、高い連鎖性を得るために意識すべき点の一つが一致率である。
(この他に“音数”“連打回数”なども関係する)

音の一致率

音の一致率とは、二つの音を比べたとき、どの程度同じに聞こえるかを数値的にあらわした指標である。
同音異義語のように、完全に同じ音が繰り返されるものを100パーセントとする。

母音一致率と子音一致率

一致の要因を分解すると、音の一致率は母音一致率と子音一致率に分けられる。
(他にもあるが、今回は説明の都合上省く)

日本語のラップにおける韻では、慣例的に母音一致を暗黙の前提とすることが多い。
したがって、多くの韻は“母音一致率100パーセントかつ子音一致率0~100パーセント”に該当する。
その結果、母音と子音を総合した“全体の一致率”も、実質は子音一致率に伴って変動することになる。

筆者が単に一致率といった場合、暗黙的に“子音一致率”を指す。
一致する要素を明示的に分けて論じたい場合のみ、“母音一致率”“子音一致率”という用語を用いる。

――と以前は書いていたが、混乱を避けるためになるべく“母音一致率”“子音一致率”と記載するようになった。(2023.11.7追記)

子音一致率の変化

子音一致率の分布を大雑把にグループ化すると次のようになる。

韻の特性子音一致率
子音の響きが遠い0%~
子音の響きが近い70%~
子音の響きが非常に近い90%~
子音の響きが同じ100%

母音一致率100パーセントのフレーズ同士で韻を踏んでも、子音と子音の響きが遠ければ心地良さは損なわれる。
子音一致率に気を配った韻は音響効果への意識が高いものとなる。

子音一致率の測定例1

SIX「B.B.弾」から一部の韻を抜粋して測定。

韻子音一致率
硬度増し automatic60%
influenza instrumental70%
小規模チーム 箒星80%
imagination 今致命傷85%
一個の楽章 introduction85%
味わわすピリっと アジアはspirit90%
にボンネットを 日本列島90%
1cm大 一世一代95%
チッ・チッ・バーン 町一番95%

この数値はSIXの感じた一例である。

一致率とは主観的な指標である。
響きが同じと感じるかどうかは、読み手や聴き手の感覚に依存する。
したがって、ある韻の一致率が何パーセントと判定されるのかは、判定者ごとに異なる。

一致率の測定例2

SIX「DEMIGRASS BURGER」から一部の韻を抜粋して測定。

韻子音一致率
テリーヌラムチョップ デミグラスソース50%
ビートパーミニッツ ミートパティミックス50%
UNIQLOパーカー 牛肉のバーガー80%
プロポーション 黒こしょう85%
傷みは取れんし イタリアンドレッシング85%

なお、一致率を意識しながら韻を分析していると、自分の好みの韻が一致率何パーセント付近かという傾向も読み取れるだろう。

90パーセントの法則

一般に、一致率を下げれば下げるほど韻を踏む難易度は低くなり、回数を多く踏める。
選べる言葉の選択肢が広がるからである。

SIXの経験から、一致率と連打回数の相関関係は次表のようになる。

一致率連打回数
0%~ほぼ無限に連打可能
70%~約10回
90%~約5回
100%2~3回

一致率70パーセントまでは、時間さえ掛ければほぼ無限に踏むことができる。
一致率70パーセントを超えると、10回あたりが限界か。
一致率90パーセントはさらに連打が困難で、5回も踏めば苦しくなる。
一致率100パーセント、つまり子音が完全に一致している韻は、まず2回で打ち止めと思ってよい。

個人的には、音響効果と連打回数を総合的に判断したとき、最もパフォーマンスが高いのは一致率90パーセント付近と考えている。
これを90パーセントの法則と呼ぶ。

(文/SIX)

from 韻韻

「韻韻」は「韻」と「韻」だから一致率100パーセントか…すごい…

変更履歴

2017.5.18

2017.8.2

2017.10.31

2018.8.8

2018.8.15

2018.8.22

2023.11.7