固有名詞ライムと知名度

概要

今回は“固有名詞ライム”をテーマに、“韻の認識しやすさ”と“個性的な韻”について考える。
優れた韻の条件の5要素でいえば、いかに“明瞭性”を犠牲にせず“独創性”を出せるか、という話になる。

なお以下の節では、説明の都合上、“韻を作成する人”を“作者”、“韻を観賞する人”を“読者”と呼ぶ。(ラップなどの音源における韻を含む)

固有名詞ライムの実例

じき夏が来るわ 大黒摩季
飽く迄教誨 ポール・ドハティー
おれ ダーツの矢ごと撃ち抜く ゴルゴ13
人生は粗悪な ポルノグラフィティ
SIX「hello, world」

4連打の例。
第2句まで母音一致とリズム一致。
第3句は母音一致。
第4句は発音依存の母音一致。

今回は深く触れないが連打ライムにおいては、高一致率のフレーズから開始し、徐々に低一致率を挟みながら変奏していく手法がある。(ライムモーフィングの一種である)

作者の知識の制約

固有名詞を使って韻を踏む場合、挙げられるフレーズの数は語彙力や知識量に比例する。
それゆえに固有名詞ライムや両面素材ライムは、コンピュータが最もアドバンテージを発揮する分野でもある。

例として、オオサンショウウオで韻を踏む場合を考えてみる。

つまり“他の作者と被らない固有名詞ライム”を出すためには、自分だけの得意ジャンルを絡めるのが有効である。
また得意ジャンルは、ラップやヒップホップなど“競争の激しい分野”(ライマー人口の多い分野)を避けたほうが差別化しやすいだろう。

読者の知識の制約

また固有名詞ライムの生み出す“意味上の効果”は、読者の知識によって変動する。(音響上の効果は変わらないが)
マニアックな固有名詞を使えば、優れた韻として受け取られない場合がある。

このように認識能力には作者同様、読者ごとの個人差がある。
結果として、固有名詞ライムには“読者を選ぶ韻”になってしまうリスクがある。

知名度の匙加減

そこで重要になるのが、知名度を考慮した固有名詞選び。

自分の得意なジャンルから探すとはいえ、どこかで一度は耳にしたことがあるような、一般性のある言葉が理想。
“その言葉は思い付かなかった”と“その言葉があるのは知っていた”を同時に満たすフレーズが、固有名詞ライムの材料としてふさわしい。

たとえばミステリ作家であれば“アガサ・クリスティはよいが、クリスチアナ・ブランドは厳しい”といった具合。
だが、このあたりの加減は公式化が難しく、各自が場面に応じて判断するしかない。

また、誰も分からないような、知名度の著しく低い固有名詞をあえて使用し、衒学的に煙に巻く手法もある。
しかし優れた韻の条件の“明瞭性”に抵触するので、個人的にはおすすめしない。

(文/SIX)

from 韻韻

うわさのフォークデュオ…?

関連項目

変更履歴

2017.7.21

2017.8.2

2017.11.1

2018.8.24

2018.8.29

2023.12.6