空蝉

一

月の様に満ち欠ける 儚いこの浮世草子
口籠もる皆 寧ろ僕に一言言わせろ
生か死か 二者択一の世界しか見ようとせず
思考停止なら 行く末は地獄絵図に変わる

命を預ける吊り橋は 酷く細く
人は 決断の踏み切り台で死後硬直
走るべき道を前に何故踵を返す
鉢植えに水を遣る時間 保て矜持

生憎 言葉や仕草に迸る才は持たず
だが見ようによっては そこが渋さ
負け戦と心得て 大人しく去っても
行き着く果ては畢竟 底無し沼

赤く流れる自我の毛細血管
尚 藻掻き溺れ 耳を塞いでいるか
容易く破れうる絹に襤褸雑巾の
しなやかさを見せてやる 朧月夜

二

年老いて遠い目をし腰が痛いだの闘病し
庇う傷跡癒えず 溜息が出る
「もし戻れたなら」そんな昔話 御免だね
縋りたくない 不発弾の縁 枝垂れ花火

辟易する 底の浅い腹積もり
あばよ 戯けて突っ掛ける 藁草履
親鳥を待ち巣で囀っている身には
証明の叶わぬ 最終定理

頭蓋骨に囲われた小宇宙で受胎告知
暗い夜 静かに浮かんでいた無題の月
掴み取る気も無かったって はい 嘘吐き
低きへ流れたならば愛想は尽きる

生きる意味を見付けた暁には
さあな ご親切に明かす義理はない
灰だらけの骨になり 舞い上がる煙となれど
蒔いた種を育てろ 言いたい事はそれだけ

text / SIX
beat / Oxydz Beats “Purple Afgan Kush”
original / 患者 “空蝉”