母音一致に関する特殊ルール
概要
母音一致における特殊なケースの扱い方を紹介。
各自がルールを定義する際の参考としてほしい。
なお、本稿にはリズム合わせの概念も一部含まれる。
前提条件
はじめに書いておくと、筆者のライミングは活字媒体であっても音読したときの音の響きを優先している。
表記上の母音ではなく、発音される母音での一致を追求する。
そのため、仮に表記上の母音不一致が起こっても問題にしない。
表記上の母音一致と発音上の母音一致、どちらを重視するかは作者によって異なり、どちらが正解ということはない。
長音「ー」と母音保有音の母音合わせ
長音はひとつの音でなく演奏記号のように解釈するため、これ自体は母音合わせできない。
撥音や促音も同じ扱いとなる。
撥音「ん」と母音保有音の母音合わせ
撥音ん
と母音保有音のペアは母音一致の要件を満たさない。
| 1 | 2 | 3 | |
|---|---|---|---|
| コンロ | こ | ん | ろ |
| 髑髏 | ど | く | ろ |
上記の2フレーズは母音不一致となる。
その根拠は、母音パターンが下記のように異なるためである。
| 1 | 2 | 3 | |
|---|---|---|---|
| コンロ | O | O | |
| 髑髏 | O | U | O |
促音「っ」と母音保有音の母音合わせ
促音っ
と母音保有音のペアは母音一致の要件を満たさない。
| 1 | 2 | 3 | |
|---|---|---|---|
| ラップ | ら | っ | ぷ |
| ラスク | ら | す | く |
上記の2フレーズは母音不一致となる。
その根拠は、母音パターンが下記のように異なるためである。
| 1 | 2 | 3 | |
|---|---|---|---|
| ラップ | A | U | |
| ラスク | A | U | U |
長音と撥音と促音の母音合わせ
リズムを無視し母音合わせだけ行う場合、長音と撥音と促音は取り除いて考えることができる。
母音パターンI(ー)U
I(っ)U
I(ん)U
は、いずれも母音パターンIU
に変換し、同一視できる。
| 1 | 2 | ||
|---|---|---|---|
| ジープ | じ | ー | ぷ |
| 湿布 | し | っ | ぷ |
| 新譜 | し | ん | ぷ |
上記の3フレーズは母音一致とみなす。
その根拠は、母音パターンが下記のように一致するためである。
| 1 | 2 | ||
|---|---|---|---|
| ジープ | I | U | |
| 湿布 | I | U | |
| 新譜 | I | U |
ただし、2音目において母音合わせが成立しているわけではない点に注意が必要。
2音目では母音合わせの判定自体が省略されているため、フレーズ全体としての母音一致は阻害しないという見方をしている。
長音と撥音、あるいは撥音と促音などの組み合わせで2音目が母音一致したとは考えない。
したがって、この例では母音一致の長さは2母音となる。
参考
二重母音の長音化(同じ母音の連続)
母音保有音の直後に同じ母音が母音単音として登場する場合、長音として扱う。
例えば緋色
の発音は下記のようにひいろ
からひーろ
へ変換して扱う。
| 1 | 2 | 3 | |
|---|---|---|---|
| 表記 | ひ | い | ろ |
| 発音 | ひ | ー | ろ |
発音されたとき、母音リズムパターンはIIO
からIーO
に変わる。
リズム合わせを行わない場合、ここで生じた長音は無視され、母音パターンはIO
となる。
その結果、溝
のようなフレーズとも、母音ライムを形成する。
| 1 | 2 | ||
|---|---|---|---|
| 緋色 | ひ | (い) | ろ |
| 溝 | み | ぞ |
| 1 | 2 | ||
|---|---|---|---|
| 緋色 | I | O | |
| 溝 | I | O |
リズム合わせを行う場合、長音は長音と一致させるため、ビート
のような長音を含んだフレーズとも、母音リズムライムを形成する。
| 1 | 2 | 3 | |
|---|---|---|---|
| 緋色 | ひ | い | ろ |
| ビート | び | ー | と |
| 1 | 2 | 3 | |
|---|---|---|---|
| 緋色 | I | ー | O |
| ビート | I | ー | O |
上記のように母音単音と長音を対応させる場合、2音目は長音に変換した結果のリズム一致であり、母音一致ではない。
実際に母音合わせの要件を満たしているのは、1音目のひ
び
に属する母音I
、および3音目のろ
と
に属する母音O
である。
二重母音の長音化(「OU」から「Oー」)
母音O
を保有する音の後ろに、母音単音U
が登場するとき、音便化により後ろの音は長音として扱う。
例「無効」の場合
| 1 | 2 | 3 | |
|---|---|---|---|
| 表記 | む | こ | う |
発音するとむこー
という音になるので、母音パターンはUO
とみなす。
(リズム合わせも行うとき、母音リズムパターンはUOー
とみなす)
| 1 | 2 | 3 | |
|---|---|---|---|
| 表記 | む | こ | う |
| 発音 | む | こ | ー |
補足
このような二重母音の長音化ルールによって作られた韻は、表記レイヤーでの母音不一致が生じる。
いわゆる“発音依存ライム”の一種とみなすべきだろう。
別記事音便化に伴う母音不一致にも同様の例(才色兼備
と内蔵電池
)を掲載している。
例外
このルールが適用されるには、“単一の形態素に含まれる場合”“終止形でない場合”などの条件がある。
たとえば思う(おもう)
をおもー
のように長音化させることは稀である。
二重母音の長音化(「EI」から「Eー」)
母音E
を保有する音の後ろに、母音単音I
が登場するとき、音便化により後ろの音は長音として扱う。
例「不正」の場合
| 1 | 2 | 3 | |
|---|---|---|---|
| 表記 | ふ | せ | い |
発音すると下記のようにふせー
という音になるので、母音パターンはUE
とみなす。
(リズム合わせも行うとき、母音リズムパターンはUEー
とみなす)
| 1 | 2 | 3 | |
|---|---|---|---|
| 表記 | ふ | せ | い |
| 発音 | ふ | せ | ー |
例外
このルールが適用されるには、“単一の形態素に含まれる場合”などの条件がある。
たとえば嫁入り(よめいり)
をよめーり
のように長音化させることは稀である。
(文/SIX)
from 韻韻
他人と違ってもかまわないけれど、自分の中ではルールを一貫させよう
変更履歴
2017.8.1
- 新規作成
2017.12.6
- 改稿
2019.1.29
- 公開用に清書
2019.2.13
- ライムブログにて公開
2019.6.17
- リズム合わせに関する補足説明を記載
2019.7.19
- 具体例を見直し
2023.11.29
- 押韻島地下城への再録にあたり改稿